2008年1月9日水曜日

アニメ映画「秒速5センチメートル」 ◎

去年、劇場公開されたのを見そびれた映画。すっかり忘れていたけど、セルフヒットを書いていて思い出してDVDを借りました(忘れていてごめんなさい〜)。

 物語も、映像も、本当に良かった。

「ほしのこえ」「雲のむこう約束の場所」の新海誠さんの作品。どちらも好きな作品だから、今作にも期待していたわけですが、期待を裏切らない、ステキな作品でした。むしろ、この作品のほうが好きかも。「ほしのこえ」も「雲のむこう約束の場所」も、登場人物たちの心の動きを美しい背景にのせて見事に描き出していると思える作品だけど、この2つにはSF要素が入っていて、私たちの「日常」とはちょっと離れたところにある物語(あまり遠くない設定ではあるのだけど)。でも、今回の「秒速5センチメートル」は、未来でもSFでもなく、本当に誰もが経験できる「日常」。転校したことで出会った少年と少女が、転校によって離れていく。実際の距離と、心の距離と、時間経過と、いろいろな変化と……。誰もが経験しそうな…形は違っても誰もが経験したことのある…そんな感情がたくさん詰まっていて、それをじっくりやさしくきちんと描いていて…。

3つの短編の物語をオムニバス風につなげてある作品になっていたのも良かった。1つ1つが完結した物語でありながら、最後に、もう一度、余韻を楽しめる感じで…。そして、主題歌として流れる山崎まさよしの「One more time, One more chance」も、曲自体の良さもしっくりくるし、歌詞に隠れている想いが、このストーリーにもしっくりして、ほんとうに良かった。

「良かった」としか感想が書けない自分がもどかしい〜。

それから、映像! この人の作る映像は本当にキレイ。光と影のコントラストや、色彩の美しさ。写真かと見まごうほどのディティールの描き込み。新宿駅の風景、電車の内部、自動販売機、コンビニの雑誌棚、図書館、学校の廊下……。全部、知っている景色、知っている小物。細かく書き込まれているのに、人物描写との違和感がない不思議な感触。写実的なのに、実写では絶対にあり得ないコントラストのキレイさ。実写よりも実写っぽい……そんな感じ。


<ストーリー的な自分へのメモ(ネタバレ注意)>
ちょっとネタバレになるけど、この3つの短編が繋がっていることを途中まで気がついていなかった私。2つ目の話を見ているときに、もしかしたらこれは別の視点の「ほしのこえ」なんじゃないのか?…なんて思っちゃいました。結局は違っていたのだけど、ある意味、あの状況なのかもしれないな〜と、あとから考えてみたり。時の流れは人それぞれで、同じ時間軸で生きていても、もしかしたら光の速度を超えた世界とのような時間の隔たりができてしまうものなのかもしれないな…と。自分の廻りにもそんな時間の隔たりがたくさんあって、寂しい気がするけれどそれが現実で、寂しい気がするけれどそれがなければ日常でもあり得ないわけで……。距離や時間は人間の心が作り出すものかもしれないな…と。


で、最後に。

 この映画、劇場に見に行かなくてよかったのかも、と(良い意味で)。

劇場に見に行ったら、廻りが気になって泣けないもんね。泣くような話ではないけれど、心の深いところを刺激されて、涙腺がど〜っとゆるんでしまう物語だったし、あまりの映像のキレイさに、それだけで涙が出てきたりしたし、家で1人で見ているからこそ、思いっきりひたって見ることができたことに感謝。逆に、1度見て内容を知ったことで、改めて「劇場で見てみたいな」と思ったりしてます。DVD発売のあとに劇場公開、なんて映画があってもいいのにね。

「秒速5センチメートル」公式サイト
新海誠さんの個人サイト

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