「生きる」は、黒澤明監督1952年の作品。
去年は黒澤明没後10年ということで、NHKで全30作品放映という特集をやっていたんですよね。私は、30作品のうち16作品しか見られなくて「残念だなぁ」と思っていたら、好評だったらしくて今年、もう一度全作品を放映してくれるみたい。
16作品を見ての感想、というのを書いておかなくちゃ…と思いつつも、すっかり忘れていたのですが、今日、録画してあった「生きる」を見て、トリガーに指がかかりました。
まずは黒澤明没後10年特集を見てみようと思った訳から…
実は、「黒澤明監督映画なんて別に見る必要ないじゃん」と思ってました。だから、没後10年特集なんてのがなければ一生見なかったかも。特集が始まっているのを知っても、最初は見る気がなかったのだけど、そのうち「ま、話の種に見ておくのもいいかも」と録画をし始めた。
…でも、やはり「古さ」が気になるし、やることがいっぱいあってじっくり見ている時間がもったいないし…と、ナガラ族でチラチラ見ていただけでした。黒澤作品なんて過去のもんだしねぇ、と思っていたしね。それでも、いくつか驚いたことがありました。最初に驚いたのは「現代が舞台になっている作品があること」。黒澤映画というと「影武者」とか「乱」とか「七人の侍」とか、そんなのしか聞いたことがなかったから、すっかり「時代劇映画の監督」だとばっかり思っていたんですよね。
基本的には、「古い」のだけど、私が見た16本の中には、たしかに面白いものもあったのにも驚きました。「古さ」を差し引いて見て面白いものもあれば
「古さ」を差し引かなくても面白いものもある…と。
私が去年見た16本は、これ。
醉いどれ天使
○静かなる決闘
七人の侍
生きものの記録
蜘蛛巣城
どん底
◎隠し砦の三悪人
悪い奴ほどよく眠る
赤ひげ
どですかでん
○デルス・ウザーラ
影武者
○乱
夢
八月の狂詩曲
○まあだだよ
面白いと思ったものは「○」もしくは「◎」を付けたもの。特に「隠し砦の三悪人」は面白かった。テンポもストーリーもドタバタの雰囲気も、「古さ」を感じさせない面白さだった。「まあだだよ」は、なんか、変な雰囲気と、どんな終わり方をするんだろう?と興味を持たせる面白さ。「影武者」と「乱」は、どちらも同じように大規模な合戦シーンがあって、似たような映画だと思っていたけれど、内容は全然違うということがわかってよかった。「乱」は面白いと思ったけれど、「影武者」は、期待したのとは違う終わり方でガックリ…。
○と◎の違いは「映画館でみてもいいかどうか」の違い、って感じかな。あくまでも、私の感想、なので、異議申し立ては受け付けません(ぺこり)。
■「天国と地獄」
去年見そびれていた「天国と地獄」。アンコール投票で第5位になったということで、今年の特集のトップバッター。
誘拐を扱った現代劇。事前に、そのことだけは知っていたのと、誘拐犯からの電話を取る三船の映像だけちらっと見たことがあったから、誘拐された家庭内で起こる出来事が主なのかと思っていたら、誘拐犯捜査の部分が多くて、そこが非常に面白かったのにビックリ。
視聴者は途中で犯人が誰だかわかるようになっていて、警察がその犯人に辿り着くまでの過程が面白い。
そうそう、NHKといえば、今年になって「刑事コロンボ」の再放送をしてくれていて、懐かしくて録画して見ているのだけど、この、刑事コロンボの面白さと同じ感じ。犯人が分かっていて、糸をたどって犯人に辿り着くワクワク感。
ということで、「天国と地獄」も○に決定〜。
■「生きる」
泣きました。
いい映画じゃないですか〜(今さら私が言うことじゃないだろうけど)。
事前に「余命半年と宣告された市役所の課長が公園を作る話」と聞いていたので、公園を作るために奔走する勇ましい姿が描かれている…と勝手に思っていたのだけれど、実際には、映画の大部分は余命が少ないと宣告されて自暴自棄になっている姿、そして、「生きる」ことに目覚めて、何かを成し遂げようと思った途端に彼の葬式の場面になる…という展開にビックリ。構成にビックリして、そして、彼の生前の姿を効果的に演出する葬式の場面の見事さに脱帽。
そして、「生きていない」時間が多過ぎるかも…、と、ちょっと反省…。
「古い映画を見てもねぇ〜」と敬遠していた自分にも反省し、これから続く特集で、取りあえず黒澤映画は全部見よう、と心に誓った私でした。
あ、でも、面白くないな〜とか、これはちょっとイヤだなぁ〜、と思う作品もあるんですよ。あくまでも私の感覚ってだけのことですから、勝手に言わせておいてください(反論はご容赦ください)。