2008年8月22日金曜日

映画「クライマーズ・ハイ」○

1985年の夏に起こった日航機の御巣鷹山への墜落事故を追った新聞記者を主人公にした物語。

「ザ・マジックアワー」を見に行った映画館で予告映像を見たときに、主人公が堤真一であることと、事故自体の話ではなく新聞記者たちの話であることに興味がわいて、なんとなく「見たいな〜」と思っていた作品。

私の感想は、「見に行ってよかった」。

でも、どうにも感想の書きづらい映画。それは、娯楽のための映画ではなくて、人生を考えさせる映画だったから。私にとっては「評価○」だったけど、娯楽を求めたり、役者の魅力を求めてみると、だいぶ感想は違うものになるのかも。


■先に原作を読んじゃった

予告を見て「見てみたい」と思ったものの、7月は仕事でバタバタしていたし、8月は夏休み的用事でバタバタ。映画館には見に行けないかも……と思ったので原作の文庫を買ってきて読むことに。

詳しい配役は知らなかったものの、主人公が堤真一であることと、泥だらけで電話をしている役を堺雅人が演じていることだけは分かっていたので、「悠木」は堤真一、「佐山」に堺雅人を想像しながら読み進めました。原作を読んでいて思ったのは、「悠木」の堤真一は納得するものの、どうも「佐山」の堺雅人が思い浮かばない…というのが私の印象。

役者では微妙なズレはあったものの、原作自体はとても入り込みやすく、淡々とした中に静かな緊迫感が詰まっていて、厚めの文庫なのに、あっという間に読了。

■原作と比較しながら……

そんなわけで、映画は原作と比較してみることに…。

前半は、新聞社内部のシーンが原作ほど緊迫感がなくて、ちょっと退屈に思えたのだけど、ストーリーの最大の山場である事故原因報道の前後の新聞社内部の緊迫感と迫力は良かったな〜と。この場面との対比のために、前半は意識的にローテンションにしていたのかもとも思える。

新聞社内部の話は、原作の文章だけでも十分イメージも緊迫感も表現されていたから、映像化の優位性はそれほど感じられなかったのだけれど、映像が圧倒的に意味をなしていたのは山登りのシーン。1985年当時の映像の間に挿入される17年後の映像。安西の息子とともに谷川岳の衝立岩に登る悠木の姿。登山家じゃない私には、小説だけでは本当の山の景色は想像ができなかった。それが、映像としてスクリーンに映し出されて感動。


■配役

原作を読んでから見たので、配役がいろいろと気になりました。
主人公の悠木は、読む前から堤真一だと分かっていたし、印象にあまりズレはなかったんですが、もう少し情けない部分が出ていても良かったのかな…と少し思ったり…。

私は小劇団系の匂いのする役者さんって結構好きなんですが、堤真一もその匂いのする役者の一人(と調べてみたら劇団出身というわけではないんですね…)。特に小劇団系の役者さんの見せる、むしろ「カッコ悪い」演技が好きなんですが、今回の悠木には「カッコ悪い」演技があまりなかったのが残念。小説を読んだ時には、カッコ悪く落ち込むシーンや取り乱すシーンもあるのかと期待していたんですけどね。

小劇団系役者の演技を期待したと言えば、佐山役の堺雅人にも期待してました。佐山に関しては、小説の佐山と堺雅人にはちょっとギャップがあったんですよね。実際、映画を見てみても、微妙にギャップが…。演技もよかったし、役者もいいのだけど、私の印象とのギャップは埋まりませんでした。それに、やっぱり、もうちょっと「カッコ悪い」シーンがあっても良かったよな〜と。

原作とのギャップが一番大きかったのは安西役の高嶋政宏。原作では、もうちょっと太っていてデッカい人のイメージがあったんですが、まぁ、よく考えてみたら、登山家なんだからデブってことはないわけで、私の小説から受ける印象が間違っていたってことなんだろうな…。

イメージピッタリだったのは、整理部長のカクさん(でんでん)。

原作ではイメージを持たなかったけど、映画で見ていいなと思ったのは、整理部の吉井を演じていたマギー。

そして、ちょっと嬉しかったのは安西の息子の燐太郎役が小澤征悦だったこと。ファイト一発〜な感じだし、実直な登山家にはピッタリ。それに、なんといっても私の好みなのね(笑)。


■関連作品

ところで、「クライマーズ・ハイ」は、テレビドラマ化もされていたようですね。悠木役が佐藤浩市で、安西役が赤井英和。佐山役は……大森南朋……と、ちょっとピンと来ない名前だけど、調べてみたら「蟲師」の虹郎をやったひとだとか。原作から受けたイメージは、堺雅人よりも佐山に近いかも。DVDも出ているようなので、ちょっと見てみようかな。

監督の原田眞人の作品も調べてみたら、「突入せよ! あさま山荘事件」なんていう作品もあるんですね。こちらは新聞記者視点ではないけれど、クライマーズハイでもキーワードとしてできた「連赤」関連のものだし、佐々淳行は名前はよく聞くけれど、実際のところあまり知らない人物だし、これも見てみようかな……。

…と、興味の範囲は堤真一から離れ、どんどん飛び火していくのでありました。
いいね〜、ネットでなんでも調べられるって。