2011年6月16日木曜日

演劇集団キャラメルボックス ハーフタイムシアター「水平線の歩き方」「ヒア・カムズ・ザ・サン」

演劇集団キャラメルボックスの春公演、ハーフタイムシアター2本だてを見てきました。「水平線の歩き方」と「ヒア・カムズ・ザ・サン」。
6/15(水) 14:00/15:30。

※ハーフタイムシアターというのは、1時間弱のお芝居のこと。キャラメルボックスが最初に使った言葉だと思う。もう20年も前から始めてる。


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実は3月に見に行った「夏への扉」は、感想を書いてない。ハインラインのSF小説を舞台化したもので、なにやら版権の問題とかなのか、DVD化はされないらしい。私は原作を読んでいないのだけれど、この原作を読む前に、キャラメルボックスの成井豊さんの脚本や、梶尾真治さんの小説を知ってしまっていたからか、その原点である「夏への扉」に対して目新しさを感じられなくて感想に困ってた(原作ファンの方、申し訳ない)。そして、その内容よりも衝撃的な状況を目の当たりにして、ショックを受けたというのもあった。

それは、震災の影響で、観客の数が激減していたこと。


私はずっと平日の昼間の回を選んで観劇してきた。確かに、土日に比べると客足は少ないんだろうとも思っていたけれど、空席がそれほど目立つようなことはなかった。キャラメルボックスを見始めてから20数年(途中、アメリカ在住期間は参加していないけれど)、キャラメルボックスの人気はずっと保たれてきていて、安泰だと思ってた。

が、3月末の平日の昼間の回は、はっきり言って客席の3分の1ぐらいしか埋まってなかった。その状況を見て、愕然としてしまった。製作総指揮の加藤さんが、ツイッターで「当日券あります!」ってしつこいぐらいにツイートしていたのも知っていたけれど、こんな状況だったとは知らなかった。

確かに私だって都内に出て行くのは、まだ怖かった。
ちゃんと調べてないから間違いかも知れないけれど、震災の影響という事で、きっと、チケット払戻しもあったんだと思う。劇場に行くのが怖い、チケットも払い戻ししてもらえる…ってなったら、「今、観劇ってのも不謹慎よね」とか「家族と離れているのは怖いから出かけたくない」っていう気持ちも分かる。でも、そんなに多くの人が「今回はやめよう」って決断をしたという事は予測できなかった。劇場に行って、実際に自分の目でガラガラの客席を見るまで分からなかった…。

そして、ツイートやブログなどの情報などから、キャラメルボックス自体が、この震災の影響で経営が厳しい状態なんだという事も知った。

それが、3月の公演「夏への扉」に対する感想。
芝居そのものへの感想よりも、震災の影響の方が心に残ってしまった公演だった。




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で、ここからは、やっと今回の公演の感想。

今回の「水平線の歩き方」と「ヒア・カムズ・ザ・サン」は、内容的に、とっても共感できる、泣けるお話でした。どちらも、「人は1人では生きていけないんだよ」というお話。人に迷惑をかけずに一人で生きていこうとする人が、最後に一人で生きている訳じゃないんだ、と気がつくお話。これから見に行く人は、ハンカチの用意を忘れずに。

「水平線の歩き方」は、主人公である幸一(岡田達也)が住んでいるアパートの1室での物語。ねたバレになってしまうから物語は書けないけど、途中で「あれ?もしかして?」と気がついてしまう事があったけれど、シリアスな気分になりそうな時に、舞台のど真ん中の居間でお菓子をぼりぼりと食べる岡田さつきさんの演技で笑いに誘われる。そのシリアスと笑いの絶妙なバランスで進んでいく物語。そして最後にぐっと来る展開。泣いた泣いた。ハンカチぐしょぐしょ。岡田くんと岡田さんのダブル岡田コンビの演技がすごかった。

そして、「ヒア・カムズ・ザ・サン」。こちらはうって変わって空港、家、会社、公園……と場面展開の多い芝居。物に着いた記憶を読み取る事ができる主人公・真也が、愛する彼女の父親の真実の姿を突き止めようとする話。主人公は阿部丈二さん演じるところの真也なのだけれど、物語の中心は彼女の父親。家族を捨てアメリカに渡って20数年。彼が突然日本に帰ってきた本当の理由は……?というお話。

両方の芝居を見て、とにかくすごかったのは岡田達也さん。


「ヒア・カムズ・ザ・サン」には、4月に脳梗塞で入院した西川浩幸さんが出る予定だった。西川さんの代役を演じることになったのは岡田くん。…ということは知っていたのだけれど、片方の芝居で主人公を演じる岡田くんが演じるってことを聞いて「あぁ、西川さんの役って言うのは、出番の少ない役なんだなー」と勝手に考えてました。そしたら、準主役で出ずっぱり! この主役級のヤクドコロの2本に同時進行で出演する岡田くんって、なんてすごい役者なんだ!!!…と、なんだかすごく感動。

そして、岡田くんが演じていた白石という役は、ちょっとヤクザっぽいぶっきらぼうで男っぽい人物像の役。それがすごく意外でした。そもそもは西川さんが演じるはずだった役なわけですよね? このキャラは西川さんっぽくない。演じる役者が西川さんから岡田くんに変わったことで、人物像を練り直したということなのかな…、西川さんが演じるはずだった白石はどんなキャラの人物だったのだろう?…と、想像を巡らせる。西川さんが演じる白石も見てみたい。


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3月の震災の影響で、キャラメルボックスも打撃を受けているようです。
3月に私が空席の多さでショックを受けた公演ほどではないでしょうけれど、今でもまだ「お芝居なんて」と思っている方もいらっしゃるのかも。

同じ芝居の公演数をただ増やすのではなく、現在の演目に加えて、劇場が空いている時間に「別の演目」を演じることに決めたキャラメルボックスの判断に敬意を表します。緊急公演として「賢治島探検記」を今回のハーフタイムシアターの合間に、「銀河旋律」を代々木の山野ホールで。そもそも「賢治島探検記」は、阪神淡路大震災のあとに“路上でも上演できる作品を”というコンセプトで作られた演目。今回の震災でも、本当は東北に行って演じたいと思ったそうです…が、経済的な打撃を受けてしまったために、金銭的な理由で、まだ実行できない…というところのようです(詳しいことは分かりませんが…)。

もしももしもこの日記を読んで興味を持ってくださった方がいれば、ぜひとも見に行ってみてください。肩の凝らない、じーんと感動できる芝居をする演劇集団です。

各ページに空席情報もあると思います。
空席のある公演は当日、劇場に行って当日券を購入することも可能。暇な時間ができちゃった方は是非。

ハーフタイムシアター「水平線の歩き方」「ヒア・カムズ・ザ・サン」
http://www.caramelbox.com/stage/halftime2011/index.html

「賢治島探検記」
http://www.caramelbox.com/stage/kenji2011/index.html

「銀河旋律」
http://www.caramelbox.com/stage/stardust-melody2011/index.html

また、夏には新撰組の無名隊士を主人公にした芝居「降りそそぐ百万粒の雨さえも」も予定されてます。こちらのチケットはまだ先なので、じっくり日程を選べるよー。
http://www.caramelbox.com/stage/furiame/index.html

柿食う客とのコラボ、アナザーフェイスの「ナツヤスミ語辞典」もございます。
http://www.caramelbox.com/stage/natsuyasumi2011/index.html


製作総指揮・加藤さんのツイッターアカウントはこちら
http://twitter.com/#!/KatohMasafumi



…と、最後は宣伝になっちゃいましたが…。